馬具工房からファッションブランドへ

エルメス人気の大きな理由の一つは、その歴史に隠されています。

1837年、パリにティエリー・エルメスが高級馬具工房を開いたことからエルメスの歴史が始まります。この時代は自動車や鉄道が登場する以前でしたので、唯一の交通手段である馬車が貴族たちのステータスシンボルとなっていました。そこで、馬車を華やかに飾る馬具が重宝されたのです。

機能性はもちろん、装飾としても優れていた彼の馬具は、「エルメスの鞍をつけている馬は、その持ち主よりもおしゃれである」と言われるほど当時から評判だったそうです。

そのような評判はすぐにフランス国内に広まり、ティエリ-・エルメスはナポレオン3世の時代には皇帝御用達の職人となりました。また、エルメスが万国博覧会で出品した鞍が銀賞を獲得したこともあって、最高の馬具製作ブランドとしての知名度を高めていくこととなります。すでに、現在われわれがエルメスに持っている、最高級の品質というイメージは、この頃にはすでに確立していたといえます。

2代目となったシャルル・エミール・エルメスの時代には、パリで行われた万国博覧会で出品した鞍が金賞を獲得し、馬具製作のブランドとして名声をさらに不動のものにします。この頃になると、フランス国内だけでなく、ヨーロッパ中に評判となり、ロシア皇帝など各国の上流階級もエルメスの顧客となりました。

しかし、時代の流れが馬具工房としてのエルメスに思わぬ向かい風となります。この頃になると自動車が登場し、馬車にとって変わろうとしていたのです。馬具製造にこだわってきたエルメス、いや、エルメスに限らず多くの馬具工房は、存亡の危機に立たされることとなりました。