ファッションブランドへの展開

エルメスより創業がやや遅かったルイ・ヴィトンはもともと馬車での移動時に使う、旅行用トランクを製作していました。しかし、自動車の台頭による馬具の需要低下を見越して世界初の旅行用バッグの発売を開始したことで、その名声を広げることに成功していました。

こうした流れの中、馬具製作にこだわってきたエルメスも、第3代のエミール・モーリス・エルメスによって大きな転換が行われることとなります。彼は馬具製造に必要だった最高級の素材、そして職人の技術を生かし、フランス国内においてファッション分野への進出を開始したのです。その結果、1892年にバーキンの前身と言えるバッグ、オータクロアが誕生します。女性のファッションにおいて、それまではバッグ、財布、ベルトなどは綿素材が主流でしたが、エルメスがオータクロアなど革素材の製品を生み出したことは画期的でした。また、現在では当たり前に使われているファスナーを、エルメスはバッグのとじ具として使ったことでも知られていて、こちらもその後のファッション界に大きな影響を与えることとなります。それまでの伝統、つまり高度な技術をもつ職人による質の高い、手作業による製品作りをエルメスは常に念頭に置きつつ、次第に腕時計、絹製品を代表とする服飾品、香水といった分野にも手を広げていき、馬具工房のエルメスから、ファッションブランドのエルメスへと変貌を遂げていきます。

とはいえ、当時のエルメス商品は、その品質の高さや価値は認めるものの、どこか古くさいというイメージもつきまとっていたのも事実で、現在のような世界的な人気ブランドの地位を確立するのはもう少し先のこととなります。