エルメスと職人育成

エルメスブランドを維持・発展させていくためには、職人が高度な技術を持っていることはもちろんですが、それだけでは日々流行が変化するファッション業界では生き残れません。エルメスは流行に対し過度に反応することは少ないものの、常に新しい何かを発見し、それを発信できるような職人育成も行っています。その一つが、異文化交流のためのグローバル研修です。この研修は、エルメス職人をアマゾンの部族、インドの遊牧民、日本の人形職人といった、エルメス商品とはあまり関係がない人々のもとへ派遣するものです。異文化の人々が暮らしの中で使う道具やその素材などを知り、新たな商品開発へのインスピレーションとしてほしいという願いが込められています。実際、この研修を通じて、サハラ地域の遊牧民からバックルや銀の加工技術を学んだり、アフリカの民族の持ち物をヒントに「マサイ」というバッグが作られたりするなど、エルメスの商品開発に生かされています。

また、エルメスの場合、デザイナーだけでなく、販売担当の人間や職人も一堂に会した新商品開発が行われています。この体制は他の高級ブランドでも行われていることではありますが、エルメスでは三者の関係がとても緊密で、これが上手くいっていることも特徴的です。これは、エルメスが同族経営で、生産から販売までを本社が独占して行っていることで方針がぶれず、エルメスで働く人々もそれを十分理解しているという前提があるので成り立ちます。

それぞれ立場は違っても、エルメスを思う気持ちは共通であるからこそ、お互いが尊重しあい、できるだけ顧客目線で製品をつくろうとし、それがうまくかみ合って高品質で愛される商品が生まれていると考えられます。